昨日は、認知行動療法の暴露反応妨害法が、森田正馬が言った「恐怖突入」と本質的に同じであることを言いました。そして、この森田の「恐怖突入」は、今から約一世紀も前に発見した方法です。それに対して、認知行動療法は1950年~60年代の論理療法や認知療法に起源をもつので、森田は数十年早く発見しています。
およそ学問上の発見に先取権が主張されるのが普通ですから、暴露反応妨害法は、森田正馬が発見したものと言ってよいと思います。

私は、まだ認知行動療法を十分勉強していないのですが、この暴露反応妨害法は次の2つの原理によっているものと考えられます。

原理1:人の不安な感情は、放っておけば時間が経つにつれて消失していく。

原理2:感情に注意を向ければ、感情はますます鋭敏になる。
 

このことを、「暴露」によって、体験的に会得するのが、暴露反応妨害法の要点です。

上の2つの原理は、森田正馬が、感情の法則と、精神交互作用説によって、見事に説明しています。

神経質の本態と療法(森田正馬著)の122ページから引用すると、

「第一、感情はこれをそのままに放任し、もしくは自然発動のままに従えば、その経過は山形の曲線をなし、一昇り、一降りして、ついには消失するものである。」

と原理1が明確に述べられています。


また、30ページに、

「神経質について私がいう精神交互作用とは、われわれがある感覚に対して注意を集中すれば、その感覚は鋭敏になり、そうして鋭敏になった感覚はさらにそこに注意を固着させ、この感覚と注意が相まって交互に作用することによりその感覚をますます強大にする、そういう精神過程を名付けたものである。」

とあります。

この精神交互作用を起こさせないために、強迫行為をがまんして止めることが重要になるわけです。

森田が発見した「感情の法則」と「精神交互作用」から、自然、演繹的に暴露反応妨害法が導かれることは容易にわかるでしょう。さらに付言するならば、神経症の治療が、説得ではなく、体得によってなされるべきことが森田により主張されていることに注意すべきです。つまり、体得するために、訓練として暴露反応妨害法を行うのです。


神経質の本態と療法の126ページから引用します。

「私の神経質療法は、ヒポコンドリー性基調感情に対して陶冶、鍛錬療法を施し、・・・
・・・そうしてこれは、常に患者をその実証、体得により、いわゆる自然に服従することを会得させようとするものであって、根本的な自然療法である。」

鍛錬療法、
実証、体得、会得
自然に服従

と、暴露反応妨害法の要点が、記述されています。

暴露反応妨害法を、西欧精神医学の恩恵とありがたく頂戴する必要はなく、すでに、数十年以上早く森田が見つけていたのです。

日本の臨床精神医学者は、この偉大な先駆的森田の発見の先取権を、西欧精神医学者に分からせる責任があるのではないでしょうか?

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