認知行動療法では、強迫性障害の治療に「暴露反応妨害法」というものを使います。この治療法はかなり有効なのですが、実は、遅くとも昭和二年(1927年、いまから90年前)にはすでに森田正馬が発見している治療法なのです。

暴露反応妨害法とは以下のとおりです。
(東京認知行動療法」センターのWebサイトから引用 http://tokyo-cbt-center.com/programs/ocd

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「曝露法」は、強い不安が生じてもすぐにそれを鎮静化しようとせずに、不安に自分自身をさらす(曝す)ことです。心理学では、不安に自分自身をさらしていると、時間の経過とともに不安が下がっていくことが確認されています。人間の「慣れ」という性質をうまく使った方法です。

一方、「反応妨害法」は、一時的に不安を鎮静化するために行ってきた強迫行為をがまんして行わないようにする方法です。強迫性障害への介入では、この2つを組み合わせた「曝露反応妨害法」を実施し、強迫行為をしなくても不安が下がっていくことを繰り返し体験してもらいます。こうすることによって、強迫行為は徐々に不要となり、強迫観念も自然と解消されていきます。
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以下は、森田正馬著の「神経質の本態と療法」の171ページに記載されている「恐怖突入」の項です。

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強迫観念の単純なもので、理解がよく従順で、勇気のある患者は、右に挙げた着眼点により説得しただけで治ることがあるのは、前の発作性神経症におけるように、ただちに恐怖の内に突入することによって治るのである。たとえば赤面恐怖の患者であって、電車に乗ることができないものに対して、「奮励一番、電車に乗って、自分の張り裂けるような赤面を衆人の前にさらすように」というふうに命じ、患者に猶予なく、ただちに実行させるようなものである。ある患者はこれによって、わずかに三、四日の間に、多年の赤面恐怖を征服したことがある。これは一面から見れば、懺悔の心理にも相当したものであって、自己を赤裸々に、衆人の前に告白発表するということによって、自我執着を去るものである。
 およそ強迫観念の患者は、つねに自己の恐怖に対して、もしそれに反抗したり、あるいは(引用者補足:恐怖突入しないで)そのまま持ちこたえているときには、ますますその恐怖を高め、精神の葛藤をいよいよ重くするものと誤想して、予期恐怖するのであるから、自分ひとりで恐怖に突入することはなかなか困難である。このとき、医師に強い信念のある後ろ盾があって、その医師から励まされ、命令されるときには、はじめてそれを実行することができる。理論的説得に深入りし、いたずらに懐疑にかられ不従順なものは。いつまでも実行できないのである。もし一度この恐怖突入を決行することができたならば、それはいわゆる捨て身の心境であって、自我忘却の境涯を体得し、自然に絶対服従ということを会得することができるのである。けれども強迫観念の少し複雑なものは、いつもこのように容易に排除することはできない。・・・概していえば、まず私の一般神経質に対する特殊療法を施すことが万全の策であって、・・・自由に作業療法を施すのがよいのである。
 ・・・そうして、第四期からは、強迫観念に対する直接の治療法を施し、自ら進んで恐怖に突入することをあえてさせるのである。たとえば火事恐怖の患者に対しては、火に関する仕事をさせるようなものである。
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 ここには、「強迫行為をがまんして行わない」ことは書いてありませんが、確か別の本のどこかで読んだことがあります。後日、みつかったら記載します。

 また、感情は放っておけば時間の経過とともに消失することは、122ページの「感情の法則」の項で森田が説明しています。 

さて、この森田の説明には、

けれども強迫観念の少し複雑なものは、いつもこのように容易に排除することはできない。

と言っております。確かに、暴露反応妨害法ではうまくいかないケースがあります。森田はその難しさを承知しており、万全の策として、臥褥(がじょく)から始まる作業療法を行い、最後のほうで「恐怖突入」という段階的治療法を打ち出していることは、認知行動療法より、ずっとよいやりかたと思います。

暴露反応妨害法の少なくとも「暴露」については、「恐怖突入」という言い方で、一世紀近く前に森田が発見しています。

それについての先取権は、森田正馬にあると言えましょう。
 
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